富山県内のOWS大会・トライアスロン大会等のライフガード協力について

■サマリー

富山県ライフセービング協会・加盟各クラブともに、設立後間もないこともあり、県内での海でのOWS大会やトライアストンのスイムパート等については、原則として夏に遊泳浜として設定されている会場かつ、過去に大会開催実績のある会場でのライフガード業務にご協力させていただきます。
遊泳浜として指定されていない海辺は、離岸流が発生しやすい・救助に向かいにくいなど、相応の理由があって遊泳浜となっていないため、県協会理事会の承認が必要となります。

 

■富山県ライフセービング協会および加盟クラブでの基本対応方針

富山県ライフセービング協会および、加盟各クラブにおいては、設立間もないこともあり、
海でのOWS大会やトライアスロンのスイムパートについては、夏季に遊泳浜として設定されている会場かつ、過去に大会開催実績があるなど、
日本水泳連盟「オープンウォータースイミング競技規則(2018-4-1)」ならびに「OWS競技に関する安全対策ガイドライン(2010-03-15)」に準拠した会場でのライフガードについてご協力させていただきます。

準拠しない会場でのライフガードについては、県協会理事会で承認を得た場合にのみ対応させていただく方針といたします。

(ご参考)
■「オープンウォータースイミング競技規則」における開催地の条件
日本水泳連盟「オープンウォータースイミング競技規則(2018-4-1)」によると、「第5条 開催地」の項目において、
「2 開催地は安全性を考慮し、流れがゆるやかで、海水、淡水もしくは汽水の水域とする。(OWS5.2)」と明記されています。

このことは、非遊泳浜でありがちな、護岸のための消波ブロック(例:テトラ社製であればテトラポット)や、離岸堤・潜堤がある海域では、「離岸流(リップカレント)」が常に発生している場合があり、その流速(急速な流れ)を考慮すると、OWS大会等には適していないといえます。

また、消波ブロック付近は消波ブロックに引きこまれる流れと離岸流が複雑に入り組んでおります。
このような消波ブロック付近をOWS大会等のコースとすることは、非常に危険といえます。

 

■「OWS競技に関する安全対策ガイドライン」からみる開催地の条件

【3】主催者に対するガイドライン
主催者は、競技者同様、OWS 競技は常に危険性が伴う競技であることを理解しておかなければならない。そのため競技会の開催に際して、以下のガイドラインを策定する。

1.開催地の選定条件

主催者は、OWS 競技に適した開催地の選定が求められる。開催地は、開催時期の水温や水底の形状など「自然環境」と、公共交通手段の利便性や医療機関との距離など「社会環境」が、ともに適していることが望ましい。

表6 自然環境についての主な確認内容

表6 自然環境についての主な確認内容
 「水深の形状:水深の形状は安全か。(スタート・ゴール地点の岸から 10m 以内で急に深くなっていないか)」
 「水底の形状:水底の形状は安全か。(スタート・ゴール地点付近に岩場が多くないか、コース上に浅瀬が点在していないか)」
「波高:開催時期に、波の高さは高くないか」

 「潮の流れ:開催時期に、潮の流れは強くないか。」
「リップカレントの有無:リップカレント(離岸流)ができにくい水域か。」

 「砂浜の広さ 砂浜の広さは十分か。」

表7 社会環境についての主な確認内容

表7 社会環境についての主な確認内容
 「医療機関:病院や診療所などの医療機関が近くにあるか。」
 「道路状況:開催時期に、道路状況は悪くないか。(渋滞がひどくないか)」
 「砂浜の施設:海の家、更衣スペース、シャワー、トイレなどが充実しているか。」
 「漁業従事者:定置網や漁港は近くにないか。」

 

■富山県東部(常願寺川以東)の海岸の特性
富山県では常願寺川以東の地域(滑川市・黒部市・入善市・朝日町)では、その地形上「寄り回り波」の被害を受けやすいことから、海水浴場として整備されている地域を除き「海岸防護が重視される沿岸」として、全面的に護岸工事がなされています。

特に、初心者・初級者を対象とした大会の場合、事前のOWSクリニックやOWS検定等で十分に慣れていない場合には、海とプールでの違いに慣れていない参加者も多く、途中棄権となることも一定の割合で発生いたしますので、これらの場合の対処を念頭に考察していきます。

 

・コース付近に潜堤がある場合
コース付近に潜堤がある場合には、潮周りによっては水深が非常に浅い場合があり、レスキューボードのフィンが接触してしまうために利用できない場合や、IRB等の小型船舶の船外機に接触してしまうため利用ができない場合もあります。
岸側の消波ブロックと、海中の潜堤および海上の離岸堤の距離が取れない場合には、PWCによるレスキューについても利用が困難な場合があります。

こうなるとレスキューチューブによるレスキューを行う必要がありますが、消波ブロック・離岸堤・潜堤付近では離岸流をはじめ複雑な流れが発生しており、そもそも大会を開催するには不適切なロケーションであるといえます。

 

・岸に消波ブロックがある場合
富山県東部の海岸でよくみられるタイプの、岸側が消波ブロック等で囲まれていたりコンクリート護岸されている場合は、レスキューボードが破損してしまう恐れがあるためボードによるレスキューができない場合があります。
レスキューチューブによるレスキューにおいても、岸壁が高い場合は上げることができなかったり、消波ブロック付近では消波ブロックに吸い込まれるような流れがあり救助者自身の二次災害が起きやすい場合があります。

 

■富山県西部(伏木富山港以西)の海岸の特性

後日執筆予定

 

■富山県ライフセービング協会および、県協会加盟クラブで協力する場合の行動方針
・「OWS競技に関する安全対策ガイドライン(2010-03-15)」準拠しない県内海会場でのライフガードについては、県協会理事会で承認を得た場合にのみ対応させていただく方針といたします。
・県外会場への協力の場合は、ホストとなるライフセービングクラブ・都道府県協会にてその確認が行われていることを前提といたします。
・河川・湖沼・運河等の場合は遊泳浜の基準に当てはまりませんが、富山県内の河川は急峻なことが多いので消防・警察当局等との緊密な連携のもと安全性の確認については入念に行います。

・大会開催1年以上前のタイミングより、「実行委員会」ならびに「安全員会」に加入させていただき、競技会に関する情報の事前提供、競技者の健康状態の把握、競技会の催行に関する判断(開催、中止、途中中止など)に協力させていただきます。
・安全確認のため、少なくとも前年同時期の同じ場所・同じ潮汐での試泳を行うことに協力いたします。

 

■日本水泳連盟「水泳指導教本 改訂版」(初版:2019年5月20日、編者:公益財団法人日本水泳連盟、編者:大修館書店)における記述

第3章 水泳の安全 
2.海における危険
2-1.海における危険の概要(134ページ)

我が国は四方を海に囲まれている海洋国家であるが、海に関してはどこでも自由に遊泳してよい訳ではない。

特に遊泳禁止区域と指定されている区域には、海浜公園や防波堤など、人口構造物の周囲など、離岸流が発生しやすい場所が多い。

また、気象条件の変化などによって遊泳に適さない状況になった海水浴場も遊泳禁止区域に含まれる。

このような場所においては、原則として遊泳場に設置されているようなライフガードが置かれることはなく、十分な水難事故対策も救急体制も整っていない。

このような場所において、子供が引率者である大人の行為に引っ張られて事故に遭遇することが少なくない。

遊泳禁止区域において、保護者たる大人がその危険性を正確に認識しないばかりに子供を危険に曝して事故を発生することのないよう、安全に関する知識を高めるとともにマナーとモラルを向上させる必要があるだろう。

 

3.自然の水域における事故要因
3-1.自然の水への対処能力不足(138ページ)
水難事故発生の主要な要因のひとつとして、自然の水への対処能力不足があげられる。
自然の水とは海、河川および湖沼池などのことであり、水泳用プールとは異なり、波や流れ、水温や水底の状況の変化がある。
水底に足を取られたり、波や流れによって流されたりして発生する水難事故が後を絶たないため、自然の水域で安全に活動するには、水や水底の状況が多様な変化をすること、自然の水域固有の危険性についてあらかじめ十分に認識しておくことが必要である。
これは、水泳用プールでは十分に体験・理解できないため、自然環境における活動を通じて多様な体験をしておくことが望ましい。

 

3-2.禁止行為
遊泳禁止の場所での遊泳中に事故が発生することが少なくない。
遊泳禁止区域には、海浜公園や防波堤、ヘッドランドなどの人口構造物の周囲など、離岸流が発生しやすい場所が多い。
このような場所では、離岸流に流された子供を救助に行った保護者が事故に遭難することも少なくない。
また、気象条件の変化などによって遊泳禁止となった海水浴場も含まれる。
遊泳禁止区域は、危険なだけでなく、十分な水難事故対策も救急体制も整っていない。
このような場所で遊泳することのないよう、マナーとモラルを向上させる必要があろう。

 

■参考・出典
・「オープンウォータースイミング競技規則(2018-4-1)」については、下記よりご確認いただけます。
公益財団法人日本水泳連盟 OWS
https://swim.or.jp/ows/

・「OWS競技に関する 安全対策ガイドライン(2010-03-15)」については、下記よりご確認いただけます。
公益財団法人日本水泳連盟 連盟情報
https://swim.or.jp/about/

・「OWS競技に関する 安全対策ガイドライン」策定の経緯については、日本ライフセービング協会(JLA)30周年の寄稿でも確認できます。
JLA 30th Anniversary > 国民皆泳の実現に向けて:日本水泳連盟 鷲見全弘様
https://jla-lifesaving.or.jp/30th/2763/

・【富山県土木部河川課】海岸保全基本計画について
https://www.pref.toyama.jp/1503/kendodukuri/dourokouwan/kouwan/kj00001315.html

 

・富山県内の主な海水浴場について
https://toyama-lsa.net/?p=147